「傷病手当金はもらわないほうがいい」。
休むかどうかを決めようとしている段階でこの言葉に行き当たると、手が止まります。
私も申請前に同じことを調べました。
この記事では、傷病手当金を5回申請した私が、実際にどうだったかを書きます。
結論から言うと、心配されていることの中身は3つに分かれていて、そのうち1つはそもそも選べる話ではありませんでした。
あわせて、私が実際に困ったのは受給するかどうかとは別のところだった、という話も書きます。
「もらわないほうがいい」と言われる理由は、3つに分かれる
調べていくと、心配の中身は次の3つに整理できました。
- 転職のときに不利になるのではないか
- 会社に知られるのではないか
- 思ったより手取りが減るのではないか
ひとまとめに「もらわないほうがいい」と言われますが、この3つは性質がまったく違います。
順に書いていきます。
① 転職に不利になるのか|私は断定できません
先に正直に書きます。私は休職後に転職していないので、この点は断定できません。
「不利にならない」と言い切っている記事も見かけますが、私自身が確かめていないことを、確かめたように書くつもりはありません。
そのうえで、書ける事実がふたつあります。
ひとつは、私は傷病手当金を受給したあと、休職前と同じ会社に復職しているということです。
受給したことで職を失う、という結果にはなりませんでした。
もうひとつは、転職エージェントに相談したときに「休職のことは話したほうがいい」と言われたことです。
隠すものとしてではなく、伝える前提のものとして扱われていました。
これは私の受け取り方ですが、採用の現場を見ている人が「隠すべき」ではなく「話したほうがいい」と言ったという事実は、判断材料になると思います。
これは私の場合の話で、すべての人に当てはまるとは限りません。
ただ、「受給する=キャリアが終わる」ではない例が、少なくともひとつあるとは言えます。
ここからは私の体験ではなく、制度の仕組みとして分かっていることです。
傷病手当金は、国税庁の説明では一般的に非課税所得とされています。
課税されない給付であるため、給与のように源泉徴収票へ記載されるものではありません。
受給の記録は健康保険が持つ情報であり、転職先が本人の同意なく照会できるものでもありません。
ただし、これは「絶対に伝わらない」という意味ではありません。面接で聞かれたときにどう答えるかは、制度の話とは別の問題です。
② 会社に知られるのか|そもそも選べません
ここが、いちばん誤解されている部分だと思います。
傷病手当金の支給申請書には、会社が記入する欄があります。
全国健康保険協会(協会けんぽ)の様式では、申請書は全4ページで構成され、そのうち1ページが事業主(会社)の証明欄です。
給与の支払い状況や勤務した日を、会社に書いてもらう必要があります。
つまり、会社に知られずに受給する方法は存在しません。
「知られるかどうか」は選択肢ではなく、申請の手続きに最初から組み込まれています。
私も、医師の記入欄・会社の記入欄・自分の記入欄を、すべて自分で回しました。
会社を経由せずに完結する場面はありませんでした。
そう考えると、この心配は「傷病手当金をもらうかどうか」ではなく「休職を会社に伝えるかどうか」の話に近いです。
休職する時点で、会社は事情を把握しています。
申請書の具体的な書き方は、別の記事にまとめています。
③ 手取りはどうなるのか|引かれるものは止まりません
3つ目が、実務的にはいちばん影響が大きいところです。
傷病手当金は、おおよそ給与の3分の2が支給される制度として説明されます。
ただし、その額がそのまま手元に残るわけではありません。
休職中も、社会保険料と住民税の支払いは続きます。
給与から天引きされていたものが、休職中は自分で払う形になったり、会社に振り込む形になったりします。
私の場合も、この2つは休んでいる間ずっと発生していました。
「3分の2もらえる」と聞いて想像する金額と、実際に自由に使える金額には差があります。
ここを知らずに生活費を見積もると、あとで足りなくなります。
実際にいくら手元に残るかは、標準報酬月額をもとにした計算で決まります。月給の3分の2という感覚とはずれることがあります。
計算の方法と月収別の目安は、こちらにまとめています。
受給条件や、実際にいくらになるのかの目安は、こちらにまとめています。
私が実際に困ったのは、受給の可否ではなかった
ここまで3つ書きましたが、私が本当に困ったのは、そのどれでもありませんでした。
申請が遅れた結果、入金のない月ができたことです。
傷病手当金は、原則として1か月ごとに申請する仕組みです。
給与のように自動で振り込まれるものではありません。
申請が遅れれば、そのぶん振込も遅れます。
私は申請のタイミングを崩してしまい、ある月は入金がゼロになりました。
翌月にまとめて受給できたので、金額として損をしたわけではありません。
受け取れなくなったのではなく、入るタイミングがずれただけです。
ただ、休職中に「今月は入ってこない」という状況になるのは、精神的にこたえました。
制度としては問題がなくても、生活としては問題になります。
もらうかどうかを迷う時間があるなら、もらったあとに毎月きちんと申請を続けられる段取りを先に考えたほうが、実際の生活には効きます。
私がつまずいた順序と、医師・会社への依頼の進め方は、noteの実務キットに8ステップでまとめています。
👉 【傷病手当金】6月、入金がゼロだった。申請を最後までやり切るための実務キット(note・有料)
申請から振込までの流れは、実際のタイムラインをこちらに書いています。
👉 傷病手当金はいつ振り込まれる?書類準備〜振込まで50日の実タイムライン
例外|もらわないほうがいいケースもある
ここまで受給する前提で書いてきましたが、そもそも申請にならないケースもあります。
ひとつは、有給休暇の範囲で足りる短期の休養です。給与が支払われている間は、支給の調整対象になります。
もうひとつは、休職中も会社から給与が支払われる場合です。支払われる額によっては、支給されないか、差額のみの支給になります。
そして、受給の条件を満たさない場合です。連続する3日間の待期期間が必要など、いくつかの条件があります。
逆に言えば、これら以外で、金銭的な理由からもらわない選択をする必要は、私の経験ではほとんどありませんでした。
まとめ|「もらわないほうがいい」の中身を分ける
- 転職への影響:私は転職していないので断定しない。ただし受給後に復職しており、転職エージェントには「休職のことは話したほうがいい」と言われた
- 会社に知られるか:申請書に会社の証明欄がある。知られずに受給する方法はない
- 手取り:社会保険料と住民税は止まらない。額面どおりには残らない
「もらわないほうがいい」と一括りにされていますが、中身を分けると、判断できるものと、そもそも選べないものが混ざっています。
私はもらう側を選び、いまは復職しています。
それが正解だったかは分かりませんが、休んでいる間の生活が成り立ったのは、この制度があったからです。
受給できるかどうかは、加入している健康保険や個別の事情によって変わります。
判断に迷うときは、健康保険組合や協会けんぽ、主治医に確認してください。
出典・参考
※2026年8月時点の情報です。制度の内容や様式は変わることがあります。
※この記事は休職を経験した個人の体験に基づくものであり、専門的な助言に代わるものではありません。受給の可否や金額については、加入している健康保険組合・協会けんぽにご確認ください。

